忙しない毎日の中で、自分の気持ちがどこにあるのか、よくわからなくなるときがあります。
やるべきことをこなして、周囲と調和して、少しでも前に進もうと踏ん張って。
その繰り返しの中でふと、「このままでいいのか」と、漠然とした不安に包まれる瞬間があるんです。
僕にとって、そのモヤモヤをほどく時間が「ひとりドライブ」です。
気分転換とかストレス発散というより、「自分に戻る」ための時間。
ときどき、何も決めずにただ走ることが、思いのほか心を整えてくれるんですよね。
理由なしにただ走る
今日一日、ちゃんとやるべきことをやった。
でも、なぜか気持ちがざわついていて「このまま家に帰りたくないな」と感じたんです。
車に乗り込んで、カーステレオにいつものプレイリストをかける。
エンジンをかけた瞬間、体の内側から音が響いてきて、ほんの少しだけ心が落ち着くのを感じました。
目的地はありません。街の光が減っていく方へ走ることにしました。
信号待ちの間にコンビニの明かりがフロントガラスに映って、タクシーが静かに通り過ぎていく。
都心を抜けて湾岸線沿いの道を走るころには、流れる景色の中に、自分の感情も少しずつ溶け込んでいくような感覚がありました。
一人で過ごす車内は、余計な情報も音も少ない。
無理に何かを考えようとしなくても、自然と呼吸が整って、気持ちがフラットになってくるんです。
運転席は、思考の避難所みたいなもの
車って、密室ではあるけれど、閉じ込められている感じがしない。
むしろ、社会や人間関係からちょっと距離をとって、自分の心の声を聞くための場所なんだと思います。
仕事で詰め込まれた情報や、SNSで流れてくる誰かの成功話、友人からの「最近どう?」というメッセージ。
全部に返事をしようとすると、少しずつ自分が薄まっていくような気がするんです。
でも、車の中ではそういうノイズが遠ざかる。
携帯も触らないし、誰に話しかけられることもない。
ただ、自分の中から湧き出す言葉や感情と、静かに向き合える。
「本当はちょっと無理してたな」と気づいたり、「別に急がなくてもいいか」と、自分を許せる瞬間がやってきます。
それはたぶん、走ることで外界から物理的にも心理的にも切り離されるからこそ、浮かび上がる本音なんだと思います。
若いころは、ひとりで過ごす時間にどこか罪悪感のようなものを抱いていました。
でも今は、それが自分にとって欠かせない「リセットの時間」だとわかっています。
自分にやさしくなれる場所があるって、ありがたいことですよね。
目的地も理由もないドライブが、思考をほどき、気持ちを整えてくれることがあります。
運転席は、僕にとってちょっとした避難所。
今日もまた、エンジン音に背中を押されながら、自分に戻るドライブをしています。